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Agent Skills|専門知識をフォルダで配るエージェントの作り方と構成


Agent Skills は、AI エージェントに「専門知識」をフォルダ単位で渡すための仕組みです。Anthropic が 2025-10-16 に発表した本機能は、SKILL.md ファイルと付随リソースを段階的に読み込ませることで、汎用エージェントを特定ドメインの専門家に変えます。本記事では、定義・仕組み・MCP との分担・Models/Agents/Skills の階層モデル・先行事例・運用上の注意点を、Anthropic の一次資料に基づいて整理します。

公開2026.05.11
最終更新2026.06.19
読了 17 分 / 約7,000
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AI × 業務活用Agent Skills とは

Agent Skills とは

Agent Skills は、Anthropic が Equipping agents for the real world with Agent Skills (2025-10-16)で公開した、AI エージェントに専門知識を「フォルダ」で渡す仕組みです。同社の Agent Skills 公式ドキュメント と、公式リポジトリ anthropics/skills(GitHub) によれば、各 Skill は SKILL.md と付随リソースをまとめた単純なディレクトリで、Claude は関連するときだけそれを動的に読み込みます。

C
結論
Skills は「専門知識をフォルダで配る」シンプルな仕組み

各 Skill は SKILL.md(YAML 冒頭に namedescription)と、必要に応じたスクリプト・参照資料・テンプレートを含むフォルダです。Claude は起動時にメタデータだけを読み、必要になったときに本体・付随ファイルを段階的に読み込みます。MCP が「外部接続」を担うのに対し、Skills は「専門知識」を担う、と Anthropic は位置付けています。

01.まず結論:Skills は「専門知識をフォルダで配る」設計

Skills の特徴を一行で言うと、「Claude に新人向けのオンボーディング資料を渡すような形で、専門知識をパッケージ化して配る仕組み」です。プロンプトのように 1 回限りの指示ではなく、複数の会話で繰り返し使われる手順や進め方の知識(英語で言う procedural knowledge)を、ファイルシステム上の整理されたフォルダとして配ります。

ここで言う「手順や進め方の知識」は、「東京の人口は約 1,400 万人」のような事実情報とは別物です。「議事録を要約するときに見る観点」「請求書を作るときの記入順序」「コードレビューで指摘する優先順位」といった、「何を、どの順番で、どう進めるか」を文書化したものを指します。Skill は、こうした「進め方」を再利用しやすい形にまとめて Claude に渡す入れ物です。

観点プロンプトSkills
渡し方1 回の会話で文章として渡すフォルダ単位で常設し、必要時に読み込まれる
再利用毎回貼り直す必要がある1 度作れば自動で適用される
拡張性コンテキストウィンドウを消費する段階的開示でほぼ無制限のリソースを束ねられる
保守履歴管理が難しいファイルなので Git でバージョン管理できる
実行テキスト指示のみスクリプトや実行ファイルを含められる

02.Skills が登場した背景

汎用エージェントは賢いが専門家ではない

Claude Code や Claude Agent SDK のような汎用エージェントは、コードを書き、ファイルを操作し、計算し、外部 API を叩く、といった「能力」は十分に持っています。一方で、たとえば米国の税務、医療レセプト、特定の社内システムといった「専門家としての文脈」は、毎回プロンプトで渡す必要がありました。Anthropic はこの状況を、「IQ 300 の数学者に税務を任せるか、経験豊富な税務専門家に任せるか」という比喩で説明しています。能力ではなく専門知識のギャップが、汎用エージェントを実務で使う際の本質的な制約だった、という整理です。

「Code is all we need」と汎用エージェント論

Anthropic は、Claude Code を作る中で「コードこそデジタル世界の汎用インターフェース」という見方を強めました。ファイルシステムと bash があれば、データ取得・整形・分析・成果物作成までほぼすべてのワークフローを表現できる、という整理です。Skills は、この汎用エージェントに「専門家としての文脈」を付け足す層として設計されました。

03.Skills の構造:SKILL.md と段階的開示

SKILL.md と YAML フロントマター

各 Skill のエントリポイントは SKILL.md という Markdown ファイルです。Claude はこのファイルの先頭に書かれたメタデータを読み、本体の手順を必要なときだけ読み込みます。

ここで使うメタデータの形式が「YAML フロントマター」です。ファイル冒頭を --- 3 本線で挟んだブロックの中に、キー: 値 の形でメタデータを書く記法で、もともと Jekyll などの静的サイトジェネレーターが採用したことで広まりました。Claude は起動時に、すべての Skill の SKILL.md から、この --- で囲まれた部分だけを読み込み、本体(Markdown 本文)はディスクに残したままにします。

最小構成は次のような形になります。--- の前後に空行を入れない、必須フィールド(namedescription)を漏らさない、の 2 点だけ守れば動きます。

---
name: pdf-processing
description: Extract text and tables from PDF files, fill forms, merge documents. Use when working with PDF files or when the user mentions PDFs, forms, or document extraction.
---

# PDF Processing

## Quick start

Use pdfplumber to extract text from PDFs:

```python
import pdfplumber

with pdfplumber.open("document.pdf") as pdf:
    text = pdf.pages[0].extract_text()
```

For advanced form filling, see [FORMS.md](FORMS.md).

Claude が見るのは、まず先頭の --- ブロックだけです。description に書かれた「何をする Skill か」「いつ使うべきか」を読んで、ユーザーの依頼に合うと判断したときだけ、--- より下の本体(Quick start 以降)を bash 経由で読み込みます。

description や本文は日本語で書いても問題ありません。Claude は多言語に対応しており、日本語の発火条件・手順をそのまま読みます。日本語チームで実運用する場合は、たとえば次のように書けます。

---
name: meeting-minutes-summarizer
description: 議事録テキストから合意事項と未決事項を分けて要約し、TODO を抽出する。ユーザーが議事録の整理・要約・宿題出しを依頼したときに使う。
---

# 議事録要約 Skill

## 使い方

入力された議事録テキストに対して、次の3点を順に出力する。

1. 合意事項(誰が・何を・いつまでに)
2. 未決事項(論点と次回までに必要な情報)
3. TODO 一覧(担当者 / 期限つき)

## 出力フォーマット

- Markdown
- 各項目は箇条書き
- 固有名詞・数字は本文から変更しない

詳細な抽出ルールは [RULES.md](RULES.md) を参照。

英語と日本語で挙動に大きな差はありません。社内チームの読みやすさを優先して、運用する言語で書くのが現実的です。複数言語で同じ Skill を使いたい場合は、英語版と日本語版を別 Skill として並べる、あるいは description だけ英語にしておく、といった組み方ができます。

フィールドの要件は次のとおりです。description が後の挙動を強く左右するため、用途と発火条件を具体的に書きます。

フィールド要件中身
name最大64文字、小文字・数字・ハイフンのみ。anthropic / claude は予約語Skill の識別子(フォルダ名と一致させるのが慣例)
description最大1024文字、空不可「何をするか」と「いつ Claude に使わせたいか」の両方を書く

段階的開示の3レベル

Skills の核となるアイデアは progressive disclosure(段階的開示)です。すべてを最初からコンテキストに載せず、必要になった分だけ読み込みます。

図解:Agent Skills の段階的開示(progressive disclosure)
L1メタデータ(常に)

起動時に system prompt に常駐。Skill あたり約 100 トークンの YAML(name / description)のみ。何百個でも同居できる。

L2SKILL.md 本体(呼び出し時)

Claude が「使う」と判断した時点で bash 経由で読み込み。5k トークン未満が目安。

L3リソース・コード(必要時のみ)

参照 md・スクリプト・データセット。bash 経由で読み込まれ、スクリプト本体はコンテキストに載らず、出力のみが消費される。実質無制限。

同じ Skill 内のファイルでも、読み込まれるタイミングが異なる。これによりコンテキストウィンドウを圧迫せずに数百の Skill を同居させられる。

レベル読み込まれるタイミングトークン目安内容
L1 メタデータ常に(起動時)Skill あたり約 100 トークンYAML の name と description
L2 指示Skill が呼び出されたとき5k トークン未満SKILL.md 本体
L3 リソース・コード必要に応じて実質無制限参照 md / スクリプト / データ。bash 経由で実行され、出力だけが context に入る
i
実装メモ
スクリプト本体はコンテキストに載らない

Claude が validate_form.py のようなスクリプトを実行したとき、スクリプトコード自体はコンテキストに読み込まれず、出力(例: 「検証成功」)だけがトークンを消費します。これにより、長大な処理を Skill にまとめても、コンテキストウィンドウを圧迫しません。

フォルダ構成の例

Anthropic 公式ドキュメントに登場する PDF 処理 Skill の例を示します。SKILL.md が入口で、補助的なガイドやスクリプトを同階層に置きます。

図解:PDF 処理 Skill のフォルダ構成

SKILL.md が入口。残りは Claude が必要と判断したときだけ bash 経由で読み込まれる。

pdf-skill/
├── SKILL.md         ── 本体の指示(Skill 呼び出し時に読み込み)
├── FORMS.md         ── フォーム入力ガイド(フォーム関連タスクのみ)
├── REFERENCE.md     ── 詳細 API リファレンス(必要時のみ)
└── scripts/
    └── fill_form.py ── ユーティリティスクリプト(bash 経由で実行)

この構成を土台に、自社の手順を実際に SKILL.md へ落とし込み、狙った場面で自動発火させ、Claude Code と Codex の両方でチームに配るところまでは、Claude Code・Codexのスキルの作り方|SKILL.mdの書き方とSkill Creatorの使い方で手順化しています。

04.MCP との関係:接続と専門知識の分担

Skills と MCP(Model Context Protocol)は競合ではなく相互補完の関係にあります。Anthropic 自身が、両者を「役割分担」として位置付けています。

レイヤー役割代表例
MCP サーバー外部の世界との接続(データ・ツール・SaaS API)Slack / GitHub / 社内 DB との連携
Skillsドメイン専門知識・手順・テンプレートのパッケージ化PDF 編集、Office 文書作成、社内ベストプラクティス
Agent ループ判断とコンテキスト管理Claude / Claude Code / Agent SDK

実務では、複数の MCP ツールを組み合わせるワークフローを Skill に書き、Skill が MCP を呼び出す形が増えています。MCP が「外部の世界へのコネクタ」、Skills が「その使い方の専門知識」と覚えると、設計の出発点になります。

05.Moving up the stack:Models / Agents / Skills の階層モデル

Anthropic は「Moving up the stack」と題した整理の中で、AI エージェントの構成要素を計算機の階層に例えて説明しています。

図解:Moving up the stack

Models = プロセッサ、Agents = OS、Skills = アプリケーション。下層だけでは業務にならず、上層が乗って初めて使われるようになる。

SkillsアプリケーションAgentsオペレーティングシステムModelsプロセッサ
計算機の比喩中身
Skillsアプリケーションドメイン専門知識・手順・テンプレート
Agents(エージェント・ランタイム)オペレーティングシステムコンテキスト管理・ツール呼び出し・ファイルシステム
ModelsプロセッサClaude / GPT-5 / Gemini などの基盤モデル

プロセッサ単体では業務にならず、OS が乗り、アプリケーションが乗って初めて使われるようになる、という構造です。この見方を採ると、「モデル選定」だけでは AI 活用は完成せず、エージェント・ランタイムと Skill 群のデザインまで含めて設計対象になることが整理しやすくなります。

06.Skills の3タイプと事例

Skills エコシステムは launch(2025-10)から数週間で数千 Skill 規模に成長しています。誰が作るかで 3 タイプに分けて捉えると、活用イメージが掴みやすくなります。

基盤型(foundational)

Anthropic 自身や、汎用領域に効くベンダーが提供する Skill 群です。Anthropic 公式の事前構築 Skill には、PowerPoint(pptx)/ Excel(xlsx)/ Word(docx)/ PDF(pdf)の文書作成系がそろっています。Cadence が公開した EHR データ分析・bioinformatics 系の Skill のように、研究領域に特化した foundational Skill も登場しています。

パートナー型(third-party)

SaaS ベンダーが自社プロダクトに特化した Skill を出す形です。Browserbase は、自社のブラウザ自動化 OSS「Stagehand」に対する Skill を公開し、Claude が Web 操作を行いやすくしました。Notion は、ワークスペース構造を Claude に理解させるための Skill 群を公開しています。

企業内型(enterprise / team)

個別企業が、自社の業務手順・社内ツール仕様・ブランドガイドラインなどを Skill として封じ込めて配るパターンです。社内エージェントに組織のベストプラクティスや独自ソフトウェアの使い方を教える手段として、大企業を含むさまざまな規模の組織で採用が広がっています。開発者組織では、コードスタイルや内部ワークフローを Claude Code に教える用途も増えています。

07.実際に出回っている主な Skill 集

Skills は 2025-10 の公開後、公式・コミュニティ・パートナー由来のものが GitHub の claude-skills topic などに集まり始めています。ここでは、実務で使えそうな代表例をいくつか紹介します。なお Skill は Markdown とスクリプトの集まりなので、利用前に中身を必ず確認するのが前提です(§09 セキュリティ参照)。

公式:anthropics/skills

Anthropic 自身が公開している anthropics/skills(GitHub) には、文書作成系(docx / pdf / pptx / xlsx)、デザイン・クリエイティブ系、開発・テスト系、エンタープライズ・コミュニケーション系が含まれます。Claude Code であれば次のコマンドでマーケットプレース経由で導入できます。

/plugin marketplace add anthropics/skills
/plugin install document-skills@anthropic-agent-skills
/plugin install example-skills@anthropic-agent-skills

とりあえず PowerPoint / Word / Excel / PDF を Claude に作らせたい、というニーズは公式の document-skills でほぼ満たせます。最初に触る Skill としても適しています。

コミュニティ:obra/superpowers

Jesse Vincent 氏(Prime Radiant)らがメンテナンスする obra/superpowers(GitHub) は、ソフトウェア開発の方法論を Skill として束ねたコレクションです。テスト駆動開発、体系的デバッグ、ブレインストーミング、コードレビュー、並列開発、Skill 作成支援などが含まれ、コーディングエージェントの「型」として広く参照されています。

本記事の上部にあるメモリ運用ルールでも参照しているように、開発系の Claude Code ユーザーが最初に入れる候補のひとつです。「自分で Skill を書く前に、まずは superpowers の skill.md を読む」だけでも、Skill 作法を学ぶ教材として有用です。

パートナー型と「Skills ではない」連携の見分け方

SaaS ベンダーの中には、Skill ではなく MCP サーバーAgent Toolkit(関数呼び出し用 SDK)として AI 連携を提供しているところもあります。両者は目的が違うので、検討時に取り違えないよう注意します。

ベンダー / プロジェクト提供形態用途のイメージ
anthropics/skillsSkills(公式)Office 文書生成、デザイン、開発支援、企業向けひな形
obra/superpowersSkills(コミュニティ・OSS)TDD、デバッグ、コードレビューなど開発方法論
Browserbase StagehandSkills(パートナー型)Stagehand によるブラウザ自動操作を Claude から扱う
NotionSkills(パートナー型)Notion ワークスペース構造の理解と deep research
StripeMCP サーバー(mcp.stripe.com)+ Agent Toolkit決済 API への接続(Skills ではない)
Shopify / Figma など他 SaaSMCP / 公式コネクタ中心(提供形態は要確認)API 連携が主。Skills 提供は導入有無を都度確認
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探し方のコツ
まずは GitHub topic と各サービスの公式ドキュメントで確認する

サードパーティの Skill は、GitHub の claude-skills topic や、利用したい SaaS の「AI / Claude 連携」ドキュメントから探すのが確実です。「とりあえず Skills を検索」より、利用したいサービスの公式チャネルから辿るほうが信頼性とメンテナンス保証の面で安全です。

08.利用面と制約:claude.ai / API / Claude Code

Skills は claude.ai / Claude API / Claude Code の各利用面で使えますが、利用面の間で自動同期はされない点に注意が必要です。

利用面事前構築 Skillカスタム Skill共有スコープ
claude.ai利用可(コード実行有効プラン)zip でアップロード個人ごと(組織一括管理は未対応)
Claude APIskill_id 指定で利用Skills API でアップロードワークスペース全体
Claude Code現状サポート外(カスタムのみ)~/.claude/skills/ または .claude/skills/個人 / プロジェクト(Plugins 経由で共有可)
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運用上の注意
claude.ai / API / Claude Code それぞれに別アップロードが必要

claude.ai にアップロードした Skill は、そのままでは Claude API では使えませんし、逆も同じです。Claude Code はファイルシステムベースなので、さらに独立しています。3 つの利用面で同じ Skill を使いたい場合は、それぞれに同じ Skill を配備する運用設計が必要です。

ランタイム制約も利用面ごとに違います。Claude API では Skill はネットワークアクセスを持たず、ランタイム中のパッケージ追加もできません(事前構成された依存関係のみ)。Claude Code は逆に、ユーザー PC と同じ権限でネットワークにアクセスできます。利用面を選ぶ時点で、想定する Skill の振る舞いと整合させる必要があります。

09.セキュリティと運用上の注意

Anthropic 公式ドキュメントは、Skills を「ソフトウェアのインストールと同じくらい慎重に扱う」よう強く推奨しています。Skill は Claude に新しい指示とコードを与える仕組みで、信頼できないソースの Skill は、命名された目的と異なる挙動を Claude に取らせる可能性があります。

リスク中身対策
予期しないツール呼び出しSkill 内の指示が想定外の bash / ファイル操作を誘発全ファイルを監査、外部 URL 取得を伴う Skill は特に慎重に
外部依存の汚染Skill が参照する外部リソースが後から書き換わる依存先を明示・固定し、定期的に再検査
データ漏えい機密情報にアクセスできる Skill が外部送信本番システムへの組み込み前にネットワーク権限を見直す
ZDR 非対応Agent Skills は Zero Data Retention 契約の対象外Skill 定義と実行データは標準保持ポリシーで保持される前提で運用

10.他のエージェント環境への広がり:SKILL.md は実質的なオープン標準へ

SKILL.md は当初 Anthropic が 2025-10 に公開した形式ですが、その後 OpenAI Codex CLI が同形式をネイティブサポートし、 公式ドキュメントでは「open agent skills standard」と位置付けています。SKILL.md は Claude 専用ではなく、ベンダー横断のオープン標準として扱われる段階に入りました。

Claude と Codex は、同じ SKILL.md(name / description + 本文 + スクリプト + 段階的開示)を共有しつつ、Skill を探しに行く場所と、補助メタデータの扱いで実装が分かれます。

Anthropic ClaudeOpenAI Codex CLI
Skill 形式SKILL.md(name / description + 本文 + scripts/)SKILL.md(同上)
進行性開示起動時はメタデータのみ、選択時に本文起動時はメタデータのみ、選択時に本文(同じモデル)
Skill の探索パスClaude Code: ~/.claude/skills/、.claude/skills/、Plugins 経由.agents/skills/、$HOME/.agents/skills/、/etc/codex/skills/、ビルトイン
呼び出し方自動(description で判定)自動 + 明示(/skills コマンドや $ シンタックスでも指名可)
ベンダー固有メタ(特になし)<code>agents/openai.yaml</code>(任意)
API / Web 経由Claude API(skill_id)、claude.ai のアップロードCodex CLI ローカル中心

つまり、同じ Skill フォルダを Claude と Codex の両方に置いて使い回せます。リポジトリに .claude/skills/ を置けば Claude Code が、.agents/skills/ を置けば Codex CLI が、それぞれ同じ SKILL.md を読み込みます(パスが違うだけで形式は共通)。両方で使いたい場合は、シンボリックリンクや共通ディレクトリ + 環境別パスで運用するチームも出始めています。

「リポジトリの取扱説明書」を担う AGENTS.md との分担

Skill とは別の流れとして、リポジトリ直下に 1 枚置く AGENTS.md という標準もあります。公式サイトによれば、OpenAI Codex / Google Jules・Gemini CLI / Cursor / GitHub Copilot / JetBrains Junie / Aider / Windsurf / Devin / Warp など多数のコーディングエージェントが対応しており、エージェント向けのオープンなドキュメンテーション標準として広く採用が進んでいます(採用プロジェクト数の最新値は agents.md のトップページで確認できます)。

SKILL.md(open agent skills standard)AGENTS.md
目的汎用エージェントに専門知識を「呼び出し可能な部品」として持たせるリポジトリのビルド手順・テスト方法・コード規約をエージェントに伝える
形式フォルダ + 段階的開示 + スクリプト実行可リポジトリ直下の 1 枚 Markdown
読み込まれ方起動時はメタデータのみ、必要時に本体・スクリプトを動的読み込みセッション開始時に全文
対応エージェントAnthropic Claude / OpenAI Codex CLI(他社も追随見込み)Codex / Jules / Gemini CLI / Cursor / Copilot / Junie / Aider / Devin ほか
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使い分け
SKILL.md は「持ち運べる専門家」、AGENTS.md は「リポジトリの取扱説明書」

両者は競合ではなく性質が違います。社内ノウハウや業務手順を AI にパッケージ化して持たせたいときは SKILL.md、特定リポジトリでのビルド・テスト・規約をコーディングエージェントに守らせたいときは AGENTS.md、という棲み分けが実務的です。Claude Code は SKILL.md / AGENTS.md / CLAUDE.md を、Codex CLI は SKILL.md / AGENTS.md を、それぞれ並行で読めるため、両方を組み合わせる構成も自然です。

11.今後の方向:testing / versioning / dependencies

Anthropic は Skills を「ソフトウェアとして扱う」方向で機能を拡張していくと述べています。具体的には、(1) テスト・評価、(2) バージョン管理、(3) Skill 間 / Skill と MCP の依存関係の明示、の 3 点です。

論点今の状況今後の方向
テスト・評価ユーザー側で都度確認Skill のトリガー精度と出力品質を測る公式ツール
バージョン管理Git に置く運用が一般的Skill 自体のバージョニング機構と挙動の系譜追跡
依存関係暗黙の前提として書くSkill が他 Skill / MCP / パッケージに依存することを明示

Anthropic は同時に、Claude が自分自身で Skill を作る「skill creator skill」を既に提供しており、AI が学んだ手順をフォルダとして残し、次の自分が再利用できる「継続学習の最小単位」として Skill を位置付けています。

関連

Claude Code・Codexのスキルの作り方|SKILL.mdの書き方とSkill Creatorの使い方

Skill を実際に自作する手順(SKILL.md の書き方・Skill Creator の使い方・チームへの広げ方)は別記事で詳しく整理しています。あわせてご覧ください。

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MCP実務入門|AIエージェントと社内ツールをつなぐ接続標準

Skills の対の概念である MCP は別記事で詳しく整理しています。あわせてご覧ください。

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12.よくある質問(FAQ)

Skills と MCP はどちらを使えば良いですか?

用途が違うので併用が前提です。MCP は外部システム(SaaS API・社内 DB・ファイルストレージ)への接続、Skills は手順・テンプレート・ベストプラクティスといった専門知識のパッケージ化を担います。Anthropic 公式ドキュメントも、Skills が「MCP サーバーを使う複雑なワークフローを Claude に教える」相互補完の役割を強調しています。

Skills は Claude 以外でも使えますか?

使えます。SKILL.md は当初 Anthropic が 2025-10 に公開した形式ですが、その後 OpenAI Codex CLI が同形式をネイティブサポートし、 公式ドキュメントでは「open agent skills standard」と明記しています。同じ Skill フォルダを Claude と Codex の両方で使い回せます。Anthropic は ~/.claude/skills/.claude/skills/、Codex CLI は .agents/skills/$HOME/.agents/skills/ を探索パスとして使う、という違いだけです。

コンテキストウィンドウを圧迫しませんか?

段階的開示の設計のため、ほぼ圧迫しません。起動時に読み込まれるのは Skill あたり約 100 トークンのメタデータだけで、SKILL.md 本体(5k 未満)は Skill が呼び出されたときに読み込まれ、参照 md やスクリプトは必要時にだけ bash 経由で読み込まれます。スクリプトの本体コードもコンテキストには載らず、実行結果だけがトークンを消費します。

Skills は誰でも作れますか?

作れます。SKILL.md の YAML フロントマター(name / description)と本文に手順を書くだけで最小の Skill になります。Anthropic も、「ファイナンス・採用・経理・法務など、コードを書かない職能の人々が Skill を作り始めている」と紹介しています。Claude 自身に Skill を作らせる skill creator skill も提供されています。

セキュリティはどう考えれば良いですか?

ソフトウェアのインストールと同じ慎重さが必要です。Anthropic 公式は、信頼できるソースの Skill のみ使うこと、未知のソースは事前監査すること、外部 URL から動的にデータを取る Skill は特に注意することを推奨しています。本番システムに組み込む前に、Skill が実行する bash / ファイル操作、ネットワーク権限、アクセス可能なデータを必ず確認します。

Agent Skills と Claude.ai 上の Projects・GPTs はどう違いますか?

目的が違います。Projects / GPTs は対話の場をテーマで束ねる仕組みで、Skills はエージェントに与える手順や進め方の知識(procedural knowledge)を再利用可能なフォルダとしてパッケージ化する仕組みです。Skills は API でも Claude Code でも使え、Git でバージョン管理でき、bash 経由でスクリプトを実行できる点が大きく違います。同じ画面上の用途(claude.ai でのドキュメント作成補助など)が重なる場面もありますが、設計思想と運用範囲が異なります。

13.まとめ

Agent Skills は、汎用エージェントに「専門家としての文脈」をフォルダ単位で渡す仕組みです。SKILL.md と段階的開示の組み合わせで、コンテキストウィンドウを圧迫せずに数百〜数千の Skill を同居させられます。

SKILL.md は当初 Anthropic が打ち出した形式ですが、OpenAI Codex CLI が同形式をネイティブサポートし「open agent skills standard」として位置付けたことで、特定ベンダーに閉じないクロスエージェント標準として広がり始めています。Claude / Codex で同じ Skill フォルダを使い回せるため、社内ノウハウを 1 度パッケージ化すれば複数のエージェント基盤で再利用できます。

MCP が「外部接続」を担い、Skills が「専門知識」を担う構造は、Anthropic の「Moving up the stack」(Models=プロセッサ/Agents=OS/Skills=アプリケーション)という階層モデルと整合します。モデル選定だけでは AI 活用は完結せず、エージェント・ランタイムと Skill 群を含めた設計が、これからの実務の標準になっていきます。

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澤田 翔太(Shota Sawada)
この記事を書いた人

澤田 翔太

株式会社クリプタル 代表取締役

1988年生まれ、慶應義塾大学卒。創業メンバーとして関わった株式会社セールスサポートを株式会社ネオマーケティング(東証STD 4196)に売却。株式会社クリプタルでも複数の事業立ち上げと売却を経験し、2022年9月には婚活・恋愛メディア「シッテク」「婚活会議」を株式会社ベビーカレンダー(東証GRT 7363)へ売却。現在はAI業務支援事業、TANTOU事業、グロースハック支援事業、メディア事業、SEOコンサルティング事業を手がける。