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Hermes Agentの使い方とできること|記憶とスキルで育つAIエージェント


Hermes Agentは、Nous Researchが公開するオープンソースのAIエージェントです。特徴は、ただツールを使うだけではなく、過去の会話を探し、よく使う手順をスキルとして残し、使いながら改善していく点です。

公開2026.05.12
最終更新2026.06.19
読了 15 分 / 約6,100字
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AI × 業務活用Self-improving AI Agent

Hermes Agentとは

Hermes Agent(Nous Research が公開する self-improving AI agent のバナー)
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本記事の結論
Hermes Agentは、過去の会話と手順を覚えて改善するAIエージェント

公式READMEでは、Hermes AgentはNous Researchが構築した「self-improving AI agent」と説明されています。この記事では、これを使うほど過去の会話・手順・ユーザーの好みを覚え、次の作業に活かすAIエージェントとして整理します(NousResearch/hermes-agent)。

01.Hermes Agentとは:ひと言でいうと

Hermes Agentとは、記憶、スキル、ツール実行、複数のAIモデル接続を備えたAIエージェントです。単発のチャットAIではなく、長く使うなかで「このユーザーは何をしているか」「このタスクはどう進めるべきか」を覚える方向に設計されています。

公式READMEでは、Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal、CLIなどから利用できること、Nous Portal、OpenRouter、OpenAI、Anthropic、自前APIなど複数のAIモデル接続先を使えることも説明されています。

観点Hermes Agentの位置づけ実務での意味
分類覚えて改善するAIエージェント単発回答より、長く使う業務に強み
入力インターフェイスCLI + メッセージングターミナル作業とチャット運用の両方に対応
記憶過去会話検索・ユーザーの好み長期プロジェクトの前提を持たせやすい
スキル経験から作成・改善繰り返し業務を手順化しやすい

GitHub上の注目度も伸びています。2026年5月12日時点で、NousResearch/hermes-agent は14万star台に到達しています。OpenClawの初動ほど派手ではありませんが、2026年春以降に急加速しているプロジェクトとして見ておくべきです。

02.開発の経緯:Nous Research が作る理由

Hermes Agent は、米国のオープンソースAI研究機関 Nous Research が開発・公開しているプロジェクトです。同社は、オープンソースのAIモデルを広げることを掲げ、分散型の学習基盤や、偏りの少ないLLMの研究で知られています。

Nous Research は Hermes シリーズ(Nous-Hermes / Hermes 2 / Hermes 3 / Hermes 4 など)として、指示に従い、ツールを使うのが得意なオープンウェイトLLMを公開してきました。Hermes Agent は、その考え方を「AIモデル単体」ではなく、実際に作業するエージェントへ広げたものです。公式READMEの「the agent that grows with you」「the self-improving AI agent」という言葉も、この流れで読むと自然です。

Hermes Agent には学習用の環境 Atropos も用意されており、エージェントの実行履歴(trajectory)を、次世代のツール呼び出しモデルの学習に活かす設計になっています。公式 README の Research-ready 行には「Batch trajectory generation, Atropos RL environments, trajectory compression for training the next generation of tool-calling models(次世代ツール呼び出しモデル学習のための、軌跡のバッチ生成、Atropos RL 環境、軌跡圧縮)」と明記されており、CONTRIBUTING.md でも environments/ 配下に RL/Atropos の連携が用意されています。つまりHermes Agentは実務ツールであると同時に、Nous Research にとって次のオープンソース LLM を鍛えるための実験場でもあるという二重の位置づけです。OpenClaw からの移行コマンド hermes claw migrate も標準搭載され、OpenClaw利用者を意識しつつ独自の「覚えて改善する」方向を打ち出しています。

03.Hermes Agentの主要機能

Hermes Agentは「何でも自動化する魔法のAI」というより、長く使う個人やチームの作業環境として設計されています。実務上は、記憶、スキル、定期実行、作業分担、モデル切替の5点を押さえると理解しやすくなります。

機能概要使いどころ
記憶過去会話・作業履歴・ユーザーの好み長期プロジェクト、顧客ごとの前提情報、研究メモ
スキル作業手順を保存し再利用定型調査、レポート、開発手順
定期実行自然文でスケジュール実行日次レポート、週次監査、バックアップ
作業分担タスクを分けて並行処理複数調査、複数案生成、検証分担
モデル切替複数のAIモデル接続先を利用コスト・速度・精度の調整

04.仕組み:記憶とスキル改善

図解:Hermes Agent の構成(連携アプリ → Core → 実行先・学習基盤)

上段「外から指示を受ける連携アプリ」、中段「記憶・スキル・モデルルーティングを束ねる Hermes Core」、下段「実行先と研究基盤」の3層で見ると整理しやすい。

① 連携アプリ側(外から)

メッセージング

チャット連携アプリ

Telegram / Discord / Slack / WhatsApp / Signal / Email など。

CLI / TUI

ターミナルから直接

hermes コマンドのTUI(マルチライン編集、スラッシュ補完、ストリーミング出力)。音声メモは文字起こしで受け取る。

② 制御の中心(Hermes Core)

記憶

MEMORY + Honcho + FTS5

MEMORY.md(文字数制限あり)+ Honcho ユーザーモデル + SQLite + FTS5 セッション検索。

スキル

agentskills.io 互換

使いながら自己進化。複雑タスク後に新規スキルを自動作成。

ルーティング

モデル切替・サブエージェント

Nous Portal / OpenRouter / NVIDIA NIM ほか200+モデル。サブエージェントを並列起動。

③ 実行側・研究基盤(中で)

実行先

7種類のバックエンド

ローカル / Docker / SSH / Singularity / Modal / Daytona / Vercel Sandbox。

自動化

cron / 通知

自然文 cron スケジューラ、各プラットフォームへの配信。

研究

Atropos RL 環境

軌跡(trajectory)を次世代 tool-calling モデル学習用に圧縮・配信。

記憶:過去会話とユーザーの好み

Hermes Agentの特徴は、会話が終わったあとも過去の会話や作業の前提を扱える設計です。公式READMEでは、過去会話の検索、AIによる要約、ユーザーの好みや前提の整理が説明されています。これは「毎回ゼロから説明する」負担を減らす一方、保存してはいけない情報の扱いを慎重に決める必要があります。

スキル:経験を手順化して再利用する

Hermes Agentは、複雑なタスクのあとにスキルを作り、使いながら直していくことを特徴にしています。たとえば「毎週の競合調査」「特定リポジトリのリリースノート作成」「顧客別の提案資料下書き」のように、手順と判断基準を残すほど効果が出やすくなります。

📘
重要
使いながら改善する、は“勝手に正しくなる”ではない

スキルや記憶が増えるほど、古い前提、間違った手順、不要な個人情報も残り得ます。Hermes Agentを業務で使う場合は、スキルのレビュー、削除、棚卸しを運用に含めるべきです。

設定ファイル:MEMORY / USER / SOUL / Skills / SQLite セッションDB

Hermes Agent の振る舞いは、ホームディレクトリ配下の ~/.hermes(Windows ネイティブは %LOCALAPPDATA%\hermes)にまとまる 設定ファイル群と SQLite データベース で決まります。OpenClaw が Markdown ファイル中心で持つのに対し、Hermes Agent は「人が読み書きする Markdown」と「機械検索のための DB」を組み合わせる設計です。

ファイル / ストア役割OpenClaw と違うところ
MEMORY.md恒久的に覚えるべき記憶を集約Hermes Agent では文字数制限が厳格。膨らんだら DB 側に逃がす
USER.mdユーザー本人の情報・好みを置くHoncho 互換のユーザーモデルと組み合わせて使う
SOUL.mdエージェントの人格(persona)を定義OpenClaw からの移行で取り込まれる(hermes claw migrate)
~/.hermes/skills/スキル本体(agentskills.io 形式)OpenClaw 移行時は openclaw-imports/ サブフォルダに展開
SQLite セッション DB過去会話・ツール実行履歴・FTS5 全文検索インデックスOpenClaw には無い。Hermes Agent 固有の「記憶を機械検索する」核
config(hermes config set ...)プロバイダー・モデル・ツールセット・プラットフォーム設定<code>hermes setup</code> ウィザードか CLI で操作。コードは触らない

運用上のポイントは2つあります。1つ目は、記憶が「人が読む Markdown」と「機械検索する DB」の二系統に分かれていることです。MEMORY.md が膨らみすぎると逆効果なので、長期の会話履歴・スキル実行履歴は SQLite + FTS5 と Honcho ユーザーモデルが受け持ちます。2つ目は、OpenClaw からの移行が標準フローに組み込まれていることです。hermes claw migrate 一発で SOUL.md / MEMORY.md / スキル / 認可済みコマンド / 一部 API キーが取り込まれ、ホームディレクトリの構造を引き継いだまま乗り換えられます。

📘
補足
MEMORY.md の文字数制限はなぜ厳しいか

MEMORY.md は毎ターンのプロンプトに同梱されるため、長くするほど推論コストと精度低下に直結します。Hermes Agent は「短い MEMORY.md + DB 側の検索」で分業させることで、長期記憶を持ちながらプロンプトを軽く保つ設計になっています。記憶を増やしたいときは MEMORY.md に追記するのではなく、会話に残して DB 側に蓄える発想が前提です。

05.推奨スペックと動かす場所

Hermes Agent は Python 3.11 と Node.js 22 の上で動きます。OpenClaw とは異なり、エージェント本体に Python 依存があるため、ローカル端末よりも cloud VPS や Daytona / Modal といったサーバーレス実行先 に置いて 24/7 常駐させる発想と相性がよい設計です。

要件公式の数字実務での目安
PythonPython 3.11(インストーラが自動投入)システム標準の3.11を上書きしない。uv で隔離するのが標準
Node.jsNode.js 22(インストーラが自動投入)OpenClaw(Node 24 推奨)と並走させる場合はバージョン管理に注意
対応OSLinux / macOS / WSL2(フル対応) / Android Termux(公式手順あり) / Windows ネイティブ(early beta)サーバー常駐は Linux か WSL2 が無難。Termux はモバイル端末で常駐させたい人向け
コンテキスト長64,000 tokens 以上のモデルが必要古いコンテキスト 8k / 32k のモデルでは記憶機能の真価が出ない
メモリ公式 README に「$5 VPS で動かせる」との記述あり(具体的な MB / GB の明示はなし)$5 級 VPS は 1GB プランが多い。同居プロセスを増やすほど余裕が要る
クラウド常駐Modal / Daytona に置いておくと、AIを使っていないあいだは自動で停止して料金が下がる仕組みを公式サポート$5 級の安いVPSから GPU を積んだ計算機まで、置く場所の選択肢が広い。常時稼働時のメモリ消費は実際に動かして測ったほうが早い
GPU(必須ではない)Atropos RL 環境を本格的に回す場合のみ GPU クラスタを別に用意。普段使いは CPU のみで十分

公式が明示しているのは「$5 VPS でも動く」「サーバーレス(Modal / Daytona)でも動く」「GPU クラスタにも置ける」という3点で、具体的な最小 RAM / CPU の数値は README・docs ともに明示されていません。OpenClaw を組み合わせたり、AI コーディングエージェントを経由させたりすると、その分のリソースが別途必要になります。最終判断は対象ワークロードでの実測に委ねつつ、Hermes Agent 自体の強みは「ノートPCに縛られず、安いVPSやサーバーレスでも常駐できる」点として押さえておけば十分です。

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セキュリティ
Hermes Agent も「専用機・専用環境」に置く運用と相性がよい

Hermes Agent は記憶を SQLite + FTS5 に貯める設計のため、業務 PC にそのまま常駐させると「過去会話の DB がローカルに残り続ける」状態になります。OpenClaw と同様に専用ユーザーアカウントや専用機(Mac Mini や安価な VPS、Modal / Daytona のサーバーレス枠など)に隔離する のがおすすめです。権限の許可は最小限から始め、慣れてきたら段階的に広げる方針は変わりません。

06.向いている用途・向かない用途

用途向き理由
長期プロジェクト補佐高い記憶と過去会話検索が効く
繰り返し調査高いスキル化しやすい
開発/運用補助中〜高CLI・ツール実行と相性がよい
一回きりの質問中通常のChatGPT/Claudeで十分な場合が多い
機密データを自動で覚えさせる用途低い保存範囲と削除ルールが必要

07.OpenClawとの違い

どちらも CLI とメッセージング常駐に対応しているので「常駐するかどうか」は両者の差ではありません。OpenClaw は端末密着+OS操作(computer use)に厚く、Hermes Agent は記憶・スキル改善・クラウド常駐に厚い という方向の違いがあり、最初の数週間は似た体験でも、半年運用するとはっきり差が出てきます。詳しい比較表・選び方・企業導入の論点は別記事に整理しています。

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08.導入前の注意点

Hermes Agentは強力ですが、記憶とスキル改善を使うほど、情報管理の責任も増えます。特に企業利用では、保存してよい情報、削除すべき情報、スキル化してよい作業、外部のAIモデルに送ってよいデータを明文化してください。

論点決めること理由
記憶保存対象と保持期間個人情報・顧客情報の過剰保存を避ける
スキルレビューと棚卸し古い手順の再利用を防ぐ
モデル送ってよいデータAIモデル接続先ごとの規約と社内規程を合わせる
自動実行承認が必要な操作メール送信・削除・決済などの事故を防ぐ

09.FAQ

Hermes Agentは誰が作っていますか?

Hermes AgentはNous Researchが公開しているオープンソースのAIエージェントです。過去の会話やスキルを使いながら改善する方向を打ち出しています。

Hermes AgentはOpenClawの代替ですか?

用途によっては代替になります。両者とも常駐は可能で、OpenClawは端末に近い体験、Hermes Agentは記憶とスキル改善に強みがあります。単純な上位/下位互換ではありません。

Hermes Agentは業務利用できますか?

可能ですが、何を覚えさせるか、どのスキルを使わせるか、外部のAIモデルに何を送るか、自動実行をどこまで許すかを先に決める必要があります。特に顧客情報や社内機密を扱う場合は、保存しない情報と削除ルールを明確にしてください。

10.まとめ

Hermes Agentは、AIエージェントを「一回ごとの便利ツール」ではなく、記憶とスキルが増えていく作業パートナーとして使うための基盤です。導入時は、スキル改善の価値と同時に、記憶の管理、スキルのレビュー、外部モデルへの送信範囲を必ず設計しましょう。

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澤田 翔太(Shota Sawada)
この記事を書いた人

澤田 翔太

株式会社クリプタル 代表取締役

1988年生まれ、慶應義塾大学卒。創業メンバーとして関わった株式会社セールスサポートを株式会社ネオマーケティング(東証STD 4196)に売却。株式会社クリプタルでも複数の事業立ち上げと売却を経験し、2022年9月には婚活・恋愛メディア「シッテク」「婚活会議」を株式会社ベビーカレンダー(東証GRT 7363)へ売却。現在はAI業務支援事業、TANTOU事業、グロースハック支援事業、メディア事業、SEOコンサルティング事業を手がける。