OpenClaw vs Hermes Agent
どちらもチャットなどで待ち受けできます。だから「普段のメッセージアプリから頼める」は、決定的な違いではありません。見るべき違いは、常駐してどこまで自律的に作業するか、何を覚えて改善するかです。OpenClawは22以上の連携アプリ、macOS/iOS/Androidアプリ、音声待ち受け、Live Canvas、ClawHub、Moltbook由来の広がりまで含めて、端末に近い体験を厚くします。Hermes Agentは過去会話の検索、使いながら直すスキル、ユーザーの好みの整理を重視し、VPSやクラウド環境でも常駐させる発想です(openclaw/openclaw / NousResearch/hermes-agent)。
01.結論:違いは「常駐の体験」か「記憶と改善」か
短期検証の体感は OpenClaw も Hermes Agent も 8 割同じ です。Telegram から指示する、コマンドを実行して結果を返してくる、スキルを呼び出す、といった日常の操作はどちらでも違和感なく回ります。hermes claw migrate で OpenClaw の設定がそのまま読めることからも、開発側もこの近さを認識しています。
本記事の比較表・思想表で扱う差は、数週間〜半年使ったときに効いてくる差 が中心です。「最初に動かして比べる」と同じに見えるのはむしろ自然で、長期運用のシナリオ(端末密着で常駐し続けるか、コンテキストを積み上げて検索するか、クラウドで休眠させたいか)を想定して選ぶのがコツです。
OpenClawとHermes Agentは、どちらもAIにツールを使わせるための土台で、CLIに加えてTelegram・Discord・Slackなどで待ち受けできます。つまり「どこからでも頼める常駐アシスタント」自体は両者に共通する性質で、違いの中心ではありません。
OpenClawの強みは、AIが端末に近い場所で常駐し、自律的に作業を進める体験です。公式READMEではGatewayを入力インターフェイスと実行をつなぐ層として位置づけ、22以上の連携アプリ、macOS/iOS/Androidの専用アプリ、声で呼び出す機能(Voice Wake / Talk Mode)、エージェントが描画する作業面(Live Canvas)などを厚く積み上げています。
Hermes Agentは「the agent that grows with you」「the self-improving AI agent」を掲げ、過去会話の検索と要約、使いながら直すスキル、ユーザーの好みの整理に力を入れています。さらに、ローカルだけでなくDocker・SSH・Singularity・Modal・Daytona・Vercel Sandboxなどの実行環境を持ち、Daytona / Modalでは待機中の環境を休止できます。つまり「自分のノートPCが起動していなくても動かす」発想も含まれます。
以降の比較表でくり返し出てくる OpenClaw 固有の3機能を、先に短く整理しておきます。いずれも CLI やチャットだけでは実現しづらい「OS操作(computer use)寄りの体験」を支えるパーツで、Hermes Agent には基本的に存在しません。
- Voice Wake:あらかじめ決めたキーワード(ウェイクワード)に反応してAIが起動し、音声で依頼を受け付ける機能。macOSやiOS上で「OK、Claw」と呼びかけるイメージで、キーボードに触れずに作業を任せられる
- Talk Mode:起動後にそのまま音声会話を続けられるモード。Android では連続音声入力、デスクトップでは ElevenLabs + システム TTS でAIが声で返答する
- Live Canvas:AIが自分で描く視覚的な作業面。文字のやり取りだけでなく、表・図・進捗状況・チェックリストなどを、AIが画面に直接描いて見せ、ユーザーがそれを操作できる(公式が「A2UI」と呼ぶエージェント主導のUI)
02.機能と伸び方の比較
| 観点 | OpenClaw | Hermes Agent |
|---|---|---|
| 開発元 | OpenClawコミュニティ | Nous Research |
| ライセンス | MIT | MIT |
| 入力インターフェイス | CLI + 22以上のチャット連携アプリ + macOS / iOS / Android アプリ | CLI + Telegram / Discord / Slack / WhatsApp / Signal / Email |
| 常駐体験 | Voice Wake / Talk Mode / Live Canvasで端末に近い | CLI/TUIとチャット中心。画面体験は軽め |
| 自律性 | スキル、ブラウザ、ファイル、定期実行をつなぎ、複数ステップの作業に寄せる | 記憶とスキルを使い、長い作業を改善しながら進める |
| 記憶 | ローカルのMEMORY.mdなど、人が読める形を重視 | 過去会話を検索し、ユーザーの好みや前提を整理 |
| スキル | ClawHubから追加・共有 | 使いながら改善 |
| 実行環境 | 自分の端末やサーバー + Docker | ローカル、VPS、クラウドなど複数 |
| 対応モデル | 複数のAIモデル接続先に対応 | Nous Portal / OpenRouter / OpenAI互換API など |
| 周辺サービス | ClawHub、公式の事例、Moltbookからの広がり | agentskills.io、Atropos、OpenClaw移行機能 |
| 相互移行 | (特になし) | hermes claw migrate で OpenClaw から取り込み可 |
どちらもCLIとチャット常駐に対応し、ライセンスもMITです。差は 常駐体験・自律性・記憶の置き方 に出ています。OpenClawは、Voice Wake、Live Canvas、iOS/Androidアプリなどで、利用者の端末に近い体験を厚くします。記憶は人が直接読めるローカルファイルを重視します。Hermes Agentは画面体験を軽くする代わりに、過去会話の検索、ユーザーの好みの整理、使いながら直すスキルを重視します。実行環境にも差があり、Hermes AgentはDaytona / Modalなどのクラウド実行環境も正式にサポートします。
参考として、GitHub Stargazers API から取得した両リポジトリのstar数推移(基準日 2026.05.12)を並べます。OpenClawはHermes Agentより 4ヶ月遅れ の公開ですが、公開後2ヶ月で5,000 starに到達し、2026.01.26には1日で10,000 → 40,000 starへ急伸しました。現時点では約37万starです。一方のHermes Agentは、2026.02末までは100 star前後で停滞していましたが、2026.03から急加速して14万star台に到達しました。両者とも2026年春以降のAIエージェント熱に乗っていますが、OpenClawは初動の爆発、Hermes Agentは後からの急加速が特徴です。
OpenClawの爆発的な初動に目が行きがちですが、Hermes Agentも比較対象として無視できない規模に伸びています。2026年5月12日時点のGitHub APIでは、OpenClawが371,007 star、Hermes Agentが145,369 starです。これは、OpenClaw型の「端末に近い常駐エージェント」だけでなく、過去会話・作業の前提・スキル改善を重視するエージェントへの関心も急速に強まっていることを示すシグナルとして読めます。
出典: GitHub Stargazers API(openclaw/openclaw / NousResearch/hermes-agent)。実線は 0〜40,000 star までの実測通過点、点線は GitHub API のページネーション上限(40,000 star)以降と、公開時点(2026.05.12)の合計値(OpenClaw 371,007 / Hermes Agent 145,369)を直線で結んだ近似です。急加速したタイミングを見るためのチャートです。
03.考え方の比較:相棒型 vs 覚えて改善する型
機能表だけ見ると重なる項目も多いですが、両者のREADMEを読むと、重視している体験は明確に違います。
| 見る点 | OpenClaw | Hermes Agent |
|---|---|---|
| ひと言でいうと | 常にそばにいる相棒 | 使うほど育つ作業役 |
| 第一目的 | 端末やOSの近くで待ち受け、作業を進める | 経験からスキルを作り、次回に活かす |
| 記憶の置き方 | ローカルファイルに人が読める形で残す | 過去会話を検索し、要約して取り出す |
| スキルの捉え方 | ClawHubから入れる再利用手順 | 利用履歴に合わせて更新される手順 |
| 動かす場所 | 個人の端末、家庭や社内のサーバー | ローカル、VPS、クラウドまで広く対応 |
| 画面体験 | メニューバー、Canvas、iOS/Androidアプリも含めて作り込む | CLI/TUIを中心に、必要な入力インターフェイスを足す |
| 向いている人 | 手元の端末で常駐させ、声や Canvas も使いたい人 | VPSやクラウドに常駐させ、過去会話や手順を覚えさせたい人 |
言い換えると、OpenClawは「いま手元で動いてくれるアシスタント」の体験を厚くし、Hermes Agentは「前回の続きから始められるエージェント」を作る方向に投資しています。どちらも常駐AIですが、常駐の価値をどこに置くかが違います。
Hermes Agentには hermes claw migrate という、OpenClawから設定・記憶・スキル・APIキーを取り込むコマンドがあります。コミュニティ側でもWeChatブリッジ「HermesClaw」が公開され、両者を同じアカウントで併走させる発想が出てきています。比較対象として並べやすいのは、お互いに影響し合っている近いプロジェクトだからです。
04.OpenClawが向いているケース
OpenClawは、AIを常駐させ、手元の端末やチャットから自律的に作業させたい場合に向いています。社内SlackやTelegramからの依頼に加え、macOSメニューバーからの呼び出し、声での起動、Canvasでの作業画面を組み合わせたいときに強みが出ます。
| ケース | OpenClawが合う理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 個人秘書 | Voice Wake / Canvas / メニューバーで端末から自然に呼び出せる | 音声誤起動と通知過多を防ぐ |
| チームの一次受付 | Slack / Discord / Teams など主要な連携アプリに置きやすい | 誰の権限で実行するかを明確にする |
| LINE / WeChat / Zalo など普段使うチャネルから依頼したい | 対応チャネルが多くカバー範囲が広い | 送信元の確認となりすまし対策を入れる |
| 軽い自動化 | セッションツールとCronで日常タスクを自動化 | 書き込み権限は段階的に広げる |
OpenClawとは
OpenClawの常駐性、自律性、Gateway、ClawHub、導入時のルールはこちら。
05.Hermes Agentが向いているケース
Hermes Agentは、長い会話履歴や作業の前提を扱う業務、繰り返し業務を改善し続けたい場合、自分のノートPCの稼働に依存させたくない場合に向いています。毎回ゼロから説明するのではなく、過去会話、プロジェクトの前提、スキルを覚えて使う発想です。
| ケース | Hermes Agentが合う理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 長期プロジェクト | 過去会話の検索とユーザー情報の整理が効く | 古い前提を更新し、不要な記憶を棚卸す |
| 定型レポート / 監査 | 自然文で定期実行し、各プラットフォームへ配信 | 出力レビューを残す |
| 研究・開発補佐 | 作業分担と学習用環境を活用しやすい | 実行権限の境界を決める |
| クラウド常駐 | Modal / Daytona で待機時のコストを抑えやすい | 再開までの待ち時間と外部送信先を確認する |
| モデル比較・切替 | OpenRouter や Nous Portal を切り替えやすい | AIモデル接続先ごとの送信規約と社内規程を合わせる |
Hermes Agentとは
Hermes Agentの記憶、スキル改善、急加速の背景はこちら。
06.併用する場合の考え方
OpenClawとHermes Agentは、必ずどちらか一方に絞る必要はありません。たとえば、OpenClawを常駐の入力インターフェイスと端末に近い操作の担当にして、Hermes Agentを長期の会話履歴・スキル改善・クラウド常駐の担当にする設計も考えられます。コミュニティ側でも、WeChatブリッジの「HermesClaw」のように両者を組み合わせる試みが出ています。
ただし併用は便利な反面、権限と責任の境界が曖昧になりやすい点に注意が必要です。
| 設計 | 考え方 | 避けるべきこと |
|---|---|---|
| 入力インターフェイスと専門家を分ける | OpenClawを受付、Hermesを深い作業にする | 同じ権限を両方に全開放する |
| 記憶の正本を決める | どちらに何を保存するか決める | 両方が別々に顧客情報を保存する |
| ログを統合する | 依頼・実行・結果を追跡できる形にする | どちらが実行したか分からない |
| 移行を意識する | hermes claw migrate を使うかは別途検討する | 片方を捨てる前に記憶・スキルを失う |
07.企業導入で先に決めること
PoCで動かすのは比較的容易ですが、常駐・自律型AIエージェントを企業の本番業務に入れるのは、率直に言ってハードルが高めです。OpenClawやHermes Agentがチャット、ファイル、API、外部送信に接続されるほど、確認すべきことも増えます。比較表だけで選ぶのではなく、まず「AIに何を許すか」「どのデータを渡すか」「どこで人間が確認するか」を決めてから道具を選ぶ順序が現実的です。
読み取り、書き込み、送信、削除、本番操作を段階分けし、人間確認をどこに置くかを技術設定より先に決めてください。「PoCで動いた = 本番でも安全」ではありません。本番運用では、なりすまし、誤実行、秘密情報の扱い、監査ログ、社内承認、運用コストが新しい論点になります。
| 共通論点 | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| 最小権限 | 最初は読み取り中心にする | 誤実行の被害範囲を小さくする |
| 秘密情報 | .env、鍵、個人情報を渡さない | ログやモデル送信で漏えいするリスクを下げる |
| なりすまし | 送信元確認を入れる | チャット常駐は送信者偽装に弱い |
| 人間承認 | 送信・削除・決済・本番反映で挟む | 不可逆な操作を防ぐ |
| 監査ログ | 誰が何を依頼し、AIが何をしたか残す | 事故時の原因追跡に必要 |
| 記憶の棚卸し | 保存対象・保持期間・削除ルールを決める | 古い前提と過剰保存が事故の温床になる |
| 送信先モデル | AIモデル接続先ごとの規約と社内規程を合わせる | 社外送信できない情報を区別する |
08.FAQ
OpenClawとHermes Agentはどちらが新しいですか?
GitHubリポジトリ作成日はHermes Agentが2025年7月22日、OpenClawが2025年11月24日です。ただし実務では日付より、何を重視しているかを見る方が重要です。OpenClawは常駐して端末に近い場所で自律的に動く体験、Hermes Agentは記憶とスキル改善に振り切っています。Hermes Agent側に hermes claw migrate という OpenClaw からの移行コマンドが搭載されているため、OpenClaw利用者を意識して整備された側面もあります。
初心者はどちらから試すべきですか?
AIを端末の近くに常駐させ、自律的な作業を試したいならOpenClaw、過去会話やスキルを覚えて改善する仕組みを試したいならHermes Agentから始めると判断しやすいです。どちらも最初は検証用環境で読み取り中心にしてください。
企業で使うならどちらが安全ですか?
ツール名だけで安全性は決まりません。最小権限、秘密情報の除外、人間確認、監査ログを設計できるかが重要です。チャット常駐型はなりすまし、記憶型は過剰保存に特に注意します。常駐・自律型エージェントの企業導入はハードルが高めなので、PoCで動いたことを本番安全の根拠にしないでください。
両方を併用する意味はありますか?
意味は出る場合があります。OpenClawを常駐の入力インターフェイス、Hermes Agentを記憶とスキル改善の専門役に分ける設計が考えられます。ただし権限、記憶の保存先、監査ログは併用前に決めてください。コミュニティ製のWeChatブリッジ「HermesClaw」のような両者連携の試みもあります。
09.まとめ
OpenClawとHermes Agentの違いは、単純な機能数ではなく、何を重視するかにあります。OpenClawは常駐して端末に近い場所で自律的に動く「相棒型」、Hermes Agentは過去会話とスキルを覚えて改善する型です。両者ともチャット常駐は可能なので、「どこからでも頼める」だけを差別化軸にすると判断を誤ります。まずは読み取り中心・限定した入力インターフェイス・検証用の作業場所で試し、自社の業務に必要な権限だけを段階的に広げるのが現実的です。
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