AI × 業務活用調べてみた / 画像のレイヤー化

画像をレイヤー化するAIを調べてみた|Qwen-Image-Layered・Canva Magic Layersほか


1枚のフラットな画像を、背景・被写体・テキストといった構成要素ごとに分けた編集可能なレイヤーへ戻したい——そんな手段をまとめて調べました。アプローチは、既存画像を多層に分解する系統、最初からレイヤーで生成する系統、身近な切り抜き・編集SaaSの3つに整理できます。本記事では、Canva Magic LayersやQwen-Image-Layeredに加え、Clipdrop・Photoroom・remove.bg、LayerDiffuse、Recraft、研究中の手法まで並べ、仕組み・向き不向き・GPUやライセンスの注意点を比較し、用途別の選び方を整理します。

公開2026.06.23
最終更新2026.06.23
読了 16 分 / 約7,600
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AI × 業務活用分解・生成・切り抜きSaaSの3つに整理

画像をレイヤー化する
AIを調べてみた

デザインやバナーを直したいのに、手元にあるのは書き出し済みのPNGやJPEGが1枚だけ。背景・被写体・文字が層に分かれた元データはもうない——よくある場面です。この記事では、こうした1枚の画像を、もう一度編集できるレイヤーに戻す方法を、仕組みごとに整理して比べます。話題のCanva Magic LayersやQwen-Image-Layeredから、身近な切り抜きツール、層ごと作る生成ツールまで、まとめて並べます。

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本記事の結論
手段は「多層に分解する」「最初から層で生成する」「切り抜き・編集SaaS」の3つに整理できる

画像のレイヤー化は、目的で大きく3つに分かれます。

  • 分解:すでにある1枚を要素ごとの層に分け直す(Canva Magic Layers、Qwen-Image-Layered)
  • 生成:これから作る画像を最初からレイヤー単位で出す(LayerDiffuse、Recraft)
  • 切り抜き・編集SaaS:被写体を抜く・背景を差し替える(Clipdrop、Photoroom、remove.bg)

手元に素材があるか、ゼロから作るか、何要素を扱うかで、向く手段が決まります。

01.まず結論:手段は「分解」「生成」「切り抜きSaaS」に整理できる

全体を図にすると、次の3方向に分けられます。見るポイントは2つ。扱うのが「すでにある画像」か「これから作る画像」か、そして「丸ごと層に分けたい」か「1つだけ抜きたい」かです。

図:画像をレイヤー化する3つの方向

左2つは『すでにある画像』を扱い、右は『これから作る画像』を扱います。多層に分けたいか、1要素を抜きたいかでも起点が変わります。

既存画像:多層に分解

1枚 → 複数レイヤー

背景・被写体・文字などを丸ごと層に分け直す。Canva Magic Layers、Qwen-Image-Layered がここ。

既存画像:切り抜き・編集

被写体を抜く・背景を替える

1要素を抜いたり背景を差し替えたりする身近なSaaS。Clipdrop、Photoroom、remove.bg がここ。

これから作る:層で生成

指示 → 最初からレイヤー

テキストや領域指定から、最初から層に分かれた素材を作る。LayerDiffuse、Recraft がここ。

02.そもそも画像の「レイヤー化」とは何か

レイヤー(層)は、PhotoshopやCanvaでおなじみのしくみです。1枚の絵を「背景」「人物」「文字」のように透明なシートに分けて重ねたもので、層ごとに動かしたり差し替えたりできます。ただ、PNGやJPEGとして書き出すと、この層の情報は消えて、すべてが1枚に焼き付いた「フラットな画像」になります。

つまり「画像をレイヤー化する」とは、フラットな1枚を、もう一度編集できる状態に戻すことです。具体的には、(1) 要素ごとに切り分け、(2) 透明度(アルファ)をつけ、(3) 隠れていた部分を補い、(4) 正しい重なり順に並べ直す、という作業です。これがどこまで自動でできるかで、各手段の差が出ます。

なお、ここで扱う画像生成・分解のAIが、生成AI全体のどこに位置づくのかは、別記事で整理しています。あわせてご覧ください。

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03.これまでのやり方:Photoshop手動と切り抜き・マッティング・SAM

新しいAIツールを見る前に、これまでレイヤー化に使われてきた方法を押さえておきます。新しいツールは、こうした手作業をどこまで自動でやってくれるか、という目で見ると分かりやすくなります。

手段やり方得意・限界
Photoshopの手動選択投げ縄ツールやマグネット選択で要素を1つずつ囲み、別レイヤーに切り出す高精度で細かく制御できるが、要素が多いと手間と時間がかかる
ワンクリック切り抜き(背景透過)被写体を自動検出し、背景を透明にする被写体と背景の2分割は速い。背面の復元や複数要素の分離はできない
マッティング(matting)髪の毛のような半透明・ふちがあいまいな部分まで、どれだけ前景かを見積もって抜くふちのきれいな切り抜きが得意。基本は前景と背景の2分け
SAMなどで範囲を選ぶ+AIで埋めるクリックや枠で範囲を選んで切り抜き、抜いた跡をAIで描き足す好きな要素を半自動で抜ける。まるごと多層に分けるには別の仕組みが要る

画素単位で要素を選び出す土台としては、Meta(メタ)が公開したSegment Anything Model(SAM)が広く使われています。点や枠で指したものだけを選んで切り抜けるモデルです。抜いたあとの穴を、AIで描き足すこともできます。ただしこうした方法は「1つ抜く」ところまで。画像をまるごと複数レイヤーに分け、重なり順まで整えるには、人が手順を組む必要がありました。次の章から紹介するAIは、この「まるごと分ける」作業を自動でやろうとしています。

04.既存画像を分解するAI①:Canva Magic Layers

Canva ロゴCanva Magic Layers

まず、いちばん手軽に試せる分解系から紹介します。Canva(キャンバ)が2026年3月に公開したMagic Layersは、フラットな画像や、AIで生成した1枚絵を、Canvaのエディター内で編集可能な複数レイヤーへ作り直す機能です。ブラウザだけで完結し、GPUを用意しなくてよいので、開発者でない実務担当者でもすぐに試せます。

Magic Layersのすごいところは、ただ要素を切り出すだけでなく、画像内の文字を編集できるテキストとして復元し、オブジェクトを1つずつ認識し、前にある要素の裏の背景まで保って分けてくれる点です。Canvaは、輪郭をなぞる従来のトレースではなく、自社の「Design Model」がデザイン全体を読み取って構成要素を見分け、編集できるレイヤーに組み立て直すと説明しています(Introducing Magic Layers(Canva Newsroom))。フォントの差し替えや色の調整、要素の移動・拡大縮小が、書き出す前のデザインのように行えます。

得意なのは、グラフィックデザインやイラスト、デザイン性の高いビジュアルです。さらにCanvaは、Magic LayersをChatGPTやGeminiなどのAIアシスタントからも使えるようにしていて、会話の中で作った画像を、そのまま編集できるレイヤーに展開する使い方も想定しています(Magic Layers is now inside the world's biggest AI assistants)。

実際にいくつかの手段を試した範囲では、Magic Layersはほかの手段と比べて圧倒的に手間が少なく、分解の精度も高いのが印象的でした。素材をアップロードするだけで、背景・被写体・文字がそれぞれ独立した要素に分かれ、そのままCanva上で動かせます。手元の1枚を編集可能な状態へ戻したいなら、まず最初に試したいツールです。

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X(SNS)での評判
AI生成画像を、編集できる素材に変える『橋渡し』として評価されている

公開直後からXなどでも反響が大きく、刺さっているのはChatGPTなどで生成した1枚画像を、Canva上で編集可能なレイヤーへ分解できる点です。生成AIの弱点だった「あとから細かく直せない」を補い、PNGやJPEGしか残っていないバナー・広告・スライドを再編集できるため、いわゆる「編集元ファイル(PSD)がない」問題を緩め、LP・広告・サムネイル・資料づくりの高速なリミックスに重宝されています。

一方で、AIの利用枠(クレジット)を消費するため、使い込むと上限に当たりやすい点は注意です。現時点ではPhotoshop(PSD)の完全な置き換えというより、構造の明確なデザインを素早く作り直す用途で強みを発揮する位置づけです。

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試して分かった注意点
Canvaにないフォントは別フォントへ置換され、見た目が「似て非なるもの」になることがある

文字をテキストボックスとして復元してくれるのは強力ですが、元画像のフォントがCanvaに用意されていないと、近いとされる別のフォントに置き換わります。その結果、文字の形や字間の印象が元と微妙にずれ、ぱっと見は似ていても同じではない仕上がりになることがありました。ブランドのロゴや指定フォントを含むデザインを分解するときは、復元後のテキストのフォントが元と合っているかを必ず目視で確認し、必要なら正しいフォントを当て直す前提で使うと安全です。

05.既存画像を分解するAI②:Qwen-Image-Layered

Qwen ロゴQwen-Image-Layered

手軽さで選ぶならMagic Layersですが、自分のシステムに組み込みたい、分け方の細かさをもっと自分で調整したい、という場合はオープンソースのモデルが候補になります。分解系で大きな話題になったのが、Alibaba(アリババ)のQwenチームが公開したQwen-Image-Layeredです。1枚の画像を、意味のまとまりごとに複数のレイヤー(透明度つきのRGBA画像)へ分けることに特化した拡散モデルで、Apache License 2.0のオープンソースとして公開されています。

特徴は、レイヤーの枚数を決め打ちせず変えられる点と、分けたレイヤーをさらに細かく分ける繰り返しの分解に対応する点です。たとえば「背景・人物・小物」の3つに分けたあと、人物だけをさらに「服・髪・顔」へ分ける、といった調整ができます。各レイヤーは透明度(アルファ)を持ち、隠れていた裏側もある程度は補われ、重なり順も保たれます。そのまま編集ソフトに読み込んで、1つずつ動かせます(技術詳細は論文Qwen-Image-Layered: Towards Inherent Editability via Layer Decomposition)。

実際に試してみると、イラストのように構成のはっきりした画像では、狙いに近いレイヤー分けがかなり手軽にできました。一方で、写真や、漫画のようにコマ・吹き出しが入り組んだ画像になると、分け方が雑になったり、まとまり全体が1枚のレイヤーとして扱われたりと、期待どおりに分かれないこともありました。万能ではなく、入力画像の作りによって得意・不得意がはっきり出る点は押さえておきたいところです。

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動作環境の注意
ローカル実行はGPU要件が高く、推論にも数分かかる

Qwen-Image-Layeredを自分のPCで動かすには高性能なGPUが必要で、メモリ(VRAM)の少ない一般向けGPUでは動かしづらく、1枚の分解にも数分かかります。手元で重いときは、クラウドのGPUを借りるか、あとで紹介するWebサービス経由で使うと、無理なく試せます。

手軽さのCanva Magic Layersと、自由度の高さとオープンさのQwen-Image-Layered。既存画像を層に分けるこの2つを、観点ごとに並べると次のようになります。

観点Canva Magic LayersQwen-Image-Layered
提供形態Canvaの機能(ベータ)オープンソース(Apache 2.0)
実行環境ブラウザで完結要GPU(ローカル/クラウド)
出力Canva上の編集可能な要素・テキスト複数のRGBAレイヤー(汎用)
強み文字の復元と既存デザイン編集との地続きさ可変レイヤー・再帰分解で粒度を制御
向く人Canvaで仕上げる制作・運用担当者自前で組み込みたい開発者・研究者

06.Figmaの標準AIとプラグインでレイヤー化する

Figma ロゴFigma

標準AI:背景削除・領域選択・Vectorize

ふだんFigmaでデザインしているなら、Figmaに入っているAIだけでも、切り抜きやレイヤー化の基本はできます。有料プランで使えるのは次の機能です(Make or edit an image with AI(Figma公式))。

  • 画像の背景を消す(背景削除)
  • なげなわで囲った部分を、別のレイヤーとして切り出す「領域選択(Select area)」
  • 画像を図形(ベクター)に変換する「Vectorize」

被写体を抜く、要素を1つずつ切り出す——その程度なら、これで十分です。

コミュニティのプラグイン

もっと細かく分けたいときは、コミュニティのプラグインで補えます。1枚の画像を複数の透明なレイヤーに分ける「AI Image Separator」や、画像やスクリーンショットを編集できるFigmaのデザインに変える「Layerize」「img2figma」などです。ただし、Canva Magic Layersのように文字まで含めて全部の要素を一度に分けてくれるプラグインは、まだ多くありません。なお、標準の「Vectorize(ベクター変換)」は、元画像の輪郭をなぞって図形に写し取る方式です。実際に写真や色の複雑な画像で試すと、図形が入り組んで崩れやすく、編集できる層にはなりませんでした。

07.手軽に試せる分解:切り抜きSaaSとイラスト特化のレイヤー分離

Clipdrop ロゴClipdropPhotoroom ロゴPhotoroomremove.bg ロゴremove.bg

切り抜き・編集SaaS(被写体と背景の2分割)

多層への自動分解ほど高度ではないものの、すでに多くの現場で使われている身近な手段が、ブラウザやAPIで被写体・背景を分ける切り抜き・編集SaaSです。「被写体を抜いて背景を差し替える」「1要素だけ取り出す」用途なら十分で、量産やシステム連携にも向きます。レイヤー化の最初の一歩として押さえておきたいカテゴリです。

サービス提供元・特徴向くケース
remove.bg背景除去の老舗。人物の髪や肩の境界に強い。API提供人物の切り抜きを大量に自動処理したい
ClipdropJasper傘下。透明物・複雑な背景に強く、不要物消去・再ライティング・拡張などの編集も揃う切り抜きに加えて整える編集までまとめて行いたい
PhotoroomEC・物販向けの編集スイート。背景差し替えやシーン合成が得意。API提供商品写真の背景差し替えを量産したい

これらは基本的に「被写体と背景」を分ける2分割が中心で、被写体に隠れた背景の完全な復元や、画像全体を要素ごとに細かく多層化する用途には向きません。逆に言えば、目的が切り抜きや背景差し替えで収まるなら、GPUもインストールも不要で、いちばん速く確実に終わる選択肢です。

イラスト特化のレイヤー分離(PSD出力)

イラスト制作なら、1枚絵を線画・色・影などのパーツに分け、編集可能なPSDとして書き出すcopainter(レイヤー分離)Komiko(AIレイヤー分割)が手早く済みます。汎用の多層分解AIより「お絵描きの編集フロー」に寄せた作りです。

08.最初からレイヤーで生成するAI:LayerDiffuseとART

ここまでは「既存の画像を扱う」手段でした。もう一方が、最初からレイヤー単位で画像を生成するアプローチです。分解と違い、隠れた背面を推測する必要がなく、各層を独立して描き分けられるのが利点です。

LayerDiffuse:透明レイヤーを直接生成する

代表例が、lllyasviel 氏らによるLayerDiffuseです。画像生成AI(拡散モデル)に「透明部分も一緒に作るしくみ(潜在透明度)」を足して、透明な背景や複数の透明レイヤーを最初から作れるようにしたものです(論文Transparent Image Layer Diffusion)。画像生成ツール「ComfyUI」向けの拡張ComfyUI-layerdiffuse(今のところSDXL・SD1.5という画像生成モデル向け)もあります。あとから切り抜くのではなく、最初から透明な素材がほしいときに向きます。

ART:領域指定の多層生成(研究)

さらに、置き場所をざっくり指定して、たくさんの透明レイヤーを一度に作る研究が、MicrosoftのART: Anonymous Region Transformer(画像系の国際会議CVPR 2025で発表)です。文章の指示と、おおまかな配置だけから、背景と複数の前景レイヤーを作るしくみを示しました。ただし、公開リポジトリ(microsoft/art-msra)は2025年7月に学習データの出所の問題からモデルの重みと推論コードを撤回しており、現時点では実行・再現できません。すぐ使えるツールではなく、レイヤー生成の研究の方向性として押さえておく位置づけです。

09.ベクターで層ごとに作るRecraftと、研究の最前線

Recraft ロゴRecraft

Recraft:レイヤー付きSVGを生成する

生成系のもう一つの方向が、写真のような画素の集まり(ラスター)ではなく、図形で表すデータ(ベクター)で層を作る手段です。代表がRecraftで、文章から、レイヤーごとに整理されたSVG(図形データ)を作ります。本物のSVGなので、FigmaやIllustratorでそのまま開いて、要素ごとに編集できます。拡大しても粗くならないので、ロゴ・アイコン・イラストのように、あとから細かく直す素材づくりに向きます。写真のように色がなめらかに変わる画像には不向きですが、「編集する前提の素材を層ごとに作る」という意味では、レイヤー化のもう一つの答えです。

ベクター形式そのものの利点や、JSONで動く軽量なアニメ形式との関係は、別記事で整理しています。あわせてご覧ください。

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背景にある研究

こうしたツールの土台には研究の積み重ねがあります。レイヤー分解はUnblending(産総研)が登場した2018年ごろから取り組まれてきたテーマで、近年はMuLAn(レイヤー分解用の学習データ)やPSDiffusion(複数レイヤーを一度に生成)など、画像生成AIの進歩で精度と手軽さが一気に上がりました。すぐ実務で使うものではありませんが、今後ツール側に取り込まれていくとみられます。

10.手段の比較と、用途別の選び方

ここまでの手段を、同じ表で並べます。方向(分解・切り抜き・生成)、入出力、公開・利用形態、向きを一覧にすると、自分の用途に近いものが見えてきます。

手段方向入力 → 出力形態向き
Canva Magic Layers分解(多層)1枚の画像 → 編集可能な要素・文字Canva(ベータ)文字復元。グラフィック/イラスト向き、ブラウザ完結
Qwen-Image-Layered分解(多層)1枚の画像 → 複数RGBAレイヤーOSS(要GPU)可変・再帰分解。イラスト得意、込み入った構図は苦手
Clipdrop / Photoroom / remove.bg切り抜き・編集1枚の画像 → 被写体+背景商用Web/API1要素抜き・背景差し替えが速い。量産・API向き
copainter / Komiko分解(イラスト特化)イラスト1枚 → 編集可能なPSD商用Web線画・色・影などへ分けてPSD化。創作の編集向き
Photoshop(Firefly)手動+生成補助選択範囲 → 抜き出し・塗り商用被写体選択・背景削除・生成塗りで半自動
LayerDiffuse(ComfyUI)生成(ラスター)テキスト → 透明レイヤーOSS(拡張)最初から透明な素材を生成
Recraft生成(ベクター)テキスト → レイヤー付きSVG商用WebFigma/Illustratorで編集可。ロゴ・アイコン向き

言葉で並べても迷いやすいので、判断の分かれ目を図にしました。まず「直したい画像が手元にあるか」で大きく分け、その中で「何要素を扱うか」「ラスターかベクターか」で具体ツールに落とします。

レイヤー化したいのは『すでにある1枚の画像』か、『これから作る画像』か?
  • すでにある画像を扱う
    1要素を抜くだけで足りるか、丸ごと多層に分けたいか?
    • 1要素を抜く・背景を替える
      切り抜き・編集SaaS(Clipdrop / Photoroom / remove.bg)
      GPU不要で速い。量産・API連携にも向く。
    • 丸ごと多層に分けたい
      多層分解AI(Canva=ブラウザ / Qwen=要GPU)
      文字復元はCanva、粒度の制御はQwen。
  • これから作る(生成する)
    ラスター(写真調)か、ベクター(図形)か?
    • ラスターの透明素材が欲しい
      LayerDiffuse(ComfyUI拡張)
      最初から透明な層で生成。
    • ベクター/SVGで編集したい
      Recraft
      レイヤー付きSVGをFigma/Illustratorで編集。
図:画像レイヤー化の手段の選び方。手元に素材があるかで大きく分け、扱う要素数や出力形式で具体的な手段に落とし込む。

11.実務で使うときの注意点(速度・GPU・ライセンス・限界)

どの手段を選ぶにしても、業務に取り入れる前に確認しておきたい共通の注意点があります。デモの見栄えだけで判断すると、運用で詰まりやすいポイントです。

観点確認することつまずきやすい点
速度・処理時間1枚あたりの処理時間と、まとめて処理できる量分解系は1枚に数分かかることがあり、大量処理には向かない
実行環境ローカルGPUか、クラウドか、ブラウザ完結かOSSの分解モデルは高VRAMのGPU前提で、手元のPCで動かない場合がある
出力品質境界のきれいさ、背面補完の自然さ、前後関係の正しさ込み入った構図や写真では、狙いどおりに分かれないことがある
ライセンス・権利モデルの利用条件と、入力素材・出力物の権利モデルが商用可でも、入力した他者の著作物・人物の権利は別問題
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過信しない
自動レイヤー化は『下書き』として使い、最終調整は人が確認する

現状のレイヤー化AIは、構成のはっきりした画像では実用的な精度を出しますが、写真や込み入った構図では境界や前後関係を取り違えることがあります。出力をそのまま納品物にするのではなく、要素の分かれ方・透明部分・重なり順を人が確認し、必要なら手作業で直す前提で使うと、手戻りを減らせます。手作業をゼロにする道具ではなく、手作業の大半を肩代わりする下書き生成だと捉えるのが安全です。

12.よくある質問(FAQ)

1枚のフラットな画像を、AIで自動的にレイヤー分けできますか?

できます。既存の1枚画像を構成要素ごとのレイヤーへ「分解」するAIが登場しています。代表例がCanva Magic Layersと、オープンソースのQwen-Image-Layeredで、前者はフラットな画像をテキストボックスや個別オブジェクトに分け直し、後者は背景・被写体・小物などを複数のRGBAレイヤー(透明度つき画像)へ分解します。被写体を1つ抜くだけなら、ClipdropやPhotoroomのような切り抜きSaaSのほうが手軽です。ただし完全な正解が得られるとは限らず、漫画のコマのように要素の判定が難しい画像では、狙いどおりに分かれないこともあります。

切り抜き(背景透過)とレイヤー化は何が違いますか?

切り抜きは「被写体と背景」を2つに分けるのが基本で、被写体に隠れていた背景は復元されません。レイヤー化は、複数の要素をそれぞれ独立した層に分け、しかも要素の裏に隠れていた部分まで補完して、個別に動かしたり差し替えたりできる状態を目指します。切り抜きはレイヤー化のいちばん単純なケースと考えると整理しやすいです。要素を1つ抜くだけなら切り抜きツールで十分ですが、構図ごと作り直したいなら分解系のレイヤー化が向きます。

生成したレイヤー素材は商用利用できますか?

ツールごとにライセンスが異なるため、必ず各サービスの利用規約とモデルのライセンスを確認してください。Qwen-Image-LayeredはApache License 2.0で公開されており、モデル自体は商用を含めて広く使える形ですが、入力に他者の著作物や人物写真を使う場合は、その素材側の権利・肖像権の問題が別に生じます。Canva・Clipdrop・Photoroom・Recraftなどの商用サービスは、出力物の利用範囲がプランや素材の出所で変わります。元画像が自社で権利を持つものか、生成物を業務で使ってよいかは、技術の可否とは別に切り分けて判断する必要があります。

13.画像のレイヤー化を制作・運用に取り入れる

画像をレイヤー化する手段は、被写体を抜くだけの切り抜きSaaSから、1枚をまるごと層へ分解するAI、最初から層で生成するAIやベクター生成まで広がりました。手元に直したい素材があるなら分解や切り抜き、ゼロから作るなら生成、という方向の選び方を出発点にすると、ツール選びで迷いにくくなります。一方で、どの手段も万能ではなく、入力画像の作りや権利の扱い、出力の確認工程をセットで考えないと、運用で止まりがちです。

弊社では、こうした生成AI・画像処理の新しいツールを、業務のどの工程にどう組み込めば投資対効果が出るかの見極めから、検証・運用設計までを伴走しています。「この制作フローを自動化できないか」「新しいAIツールを試したいが、どこから手をつけるか」といった段階でも、実データで一緒に進められます。お気軽にお問い合わせください。

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澤田 翔太(Shota Sawada)
この記事を書いた人

澤田 翔太

株式会社クリプタル 代表取締役

1988年生まれ、慶應義塾大学卒。創業メンバーとして関わった株式会社セールスサポートを株式会社ネオマーケティング(東証STD 4196)に売却。株式会社クリプタルでも複数の事業立ち上げと売却を経験し、2022年9月には婚活・恋愛メディア「シッテク」「婚活会議」を株式会社ベビーカレンダー(東証GRT 7363)へ売却。現在はAI業務支援事業、TANTOU事業、グロースハック支援事業、メディア事業、SEOコンサルティング事業を手がける。