AI × 業務活用AI活用ノウハウ / AI壁打ちで施策を検証するプロンプト集

AIを壁打ち相手に施策を検証する|プレモーテム実践プロンプト集


企画や施策を実行前にAI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)に壁打ちしてもらい、「失敗したら原因は何か」を検証する方法を整理します。軸になるのはGary Klein氏が2007年にHarvard Business Reviewで提唱したプレモーテムです。人を集める負荷なく何度でも実行でき、新規企画・マーケティング施策・AI導入判断など場面別の実践プロンプトと、AIに任せきりにしないための注意点をまとめます。

公開2026.07.09
最終更新2026.07.09
読了 20 分 / 約8,000字
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AI × 業務活用AI壁打ちで施策を検証するプロンプト集

AIを壁打ち相手に
施策を検証する

企画や施策を実行に移す前に、「もしこれが失敗したとしたら、原因は何か」をあらかじめ洗い出しておく手法をプレモーテムと呼びます。もともとは複数人で集まり、多様な視点から懸念を出し合う手法ですが、この壁打ち役をAIに任せると、人を集める負荷なく、何度でも、複数の視点から失敗シナリオを出させられるようになります。本記事は、AIとの壁打ちで施策を検証するやり方そのものに絞って、場面別にそのまま使えるプロンプトと、任せきりにしないための注意点をまとめます。

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本記事の結論
AIに材料を作らせ、判断は人が引き取る

プレモーテムは、実行前の企画に対して「失敗したと仮定した場合の原因」を洗い出す手法です。AI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)を壁打ち相手にすると、この洗い出し作業を人を集めずに、何度でも、複数の立場から実行できます。ただしAIが出すのはあくまで「材料」です。どのリスクを重く見るか、計画をどう修正するかの最終判断は、引き続き人が引き取ります。

01.結論

プレモーテムでつまずきやすいのは、「懸念点を出す会議を開く」こと自体のハードルです。関係者のスケジュールを合わせ、否定的な意見を場に出しやすい空気を作る必要があります。AIを壁打ち相手にすれば、この準備コストを大きく減らせます。以降、プレモーテムの基本→AIとの相性→実践プロンプト4パターン→注意点の順に説明します。

02.プレモーテムとは|あらかじめ失敗を仮定するリスク手法

プレモーテムは、心理学者で意思決定研究を専門とするGary Klein氏が、Harvard Business Review 2007年9月号の論文「Performing a Project Premortem」で提唱した手法です。通常のリスク洗い出しは「失敗するかもしれない」という仮定の弱さから懸念が出にくくなりがちですが、プレモーテムでは「すでに失敗した」という確定した前提に立って原因を挙げる点が異なります。「これから起きるかもしれないこと」ではなく「すでに起きたこと」として振る舞うと、人は理由を思いつきやすくなる――という考え方に基づいています。

従来のやり方

通常のリスク洗い出し

  • 「失敗するかもしれない」という弱い仮定
  • 都合の悪い懸念は言い出しにくい
  • 楽観的な見立てに引っ張られやすい
この記事の手法

プレモーテム

  • 「すでに失敗した」という確定した前提
  • 後知恵の形式で理由を挙げやすくなる
  • 多様な立場からの懸念を出しやすくなる
「起きるかもしれない」という弱い仮定を、「すでに起きた」という確定した前提に置き換えることで、人は理由を思いつきやすくなる。

この考え方の裏付けとなっているのが、Mitchell氏・Russo氏・Pennington氏による1989年の実験研究(Journal of Behavioral Decision Making掲載)です。ある出来事が「確実に起きた」という前提で理由を挙げるグループは、「起きるかもしれない」という前提で挙げるグループより、思いつく理由の数がおよそ30%多かったと報告されています。ただしこの実験が示したのは理由の「数」の増加であり、理由の正確さや質までを検証したものではない点には注意が必要です。

Klein氏自身も、自身のブログ「Seeing What Others Don't」で、Veinott・Klein・Wiggins(2010年)による実験を紹介しています。178人の大学生を対象にした実験で、プレモーテムを行った学生は、単純な批評や長所・短所の比較を行った学生と比べて、結果に対する自信の過剰さがもっとも大きく減った、と報告されています。

より実務に近い検証としては、Gallo氏・Bischoff氏による2016年の研究(Journal of Enterprise Transformation掲載)があります。経験豊富なプログラムマネージャー・エンジニア101人を対象に、通常のブレインストーミングとプレモーテムを比較したところ、プレモーテムを使ったチームのほうが、実用性の高いリスクや見落としがちな重大リスクをより多く洗い出せたと報告されています。

図:プレモーテムを裏付ける研究の年表
研究・提唱
時期
分かったこと
Mitchell・Russo・Pennington
1989
「すでに起きた」前提で理由の数が増える
Gary Klein(HBR)
2007
プレモーテムとして手法化・命名
Veinott・Klein・Wiggins
2010
自信過剰の低減効果がもっとも大きい
Gallo・Bischoff
2016
実務者101人で重大リスクの検出が向上

各研究の出典・DOIは本文中のリンクを参照。

03.なぜAIとの相性がいいのか

プレモーテムはもともと、複数人で集まって多様な視点をぶつけ合う前提の手法です。AIを使うと、この前提を崩さずに実施コストだけを下げられます。

図:プレモーテムとAIの相性がいい4つの理由

人を集める負荷がなくなり、何度でも回せて、言い出しにくい懸念も出しやすく、視点の偏りを減らせる。

① 人を集めなくていい

1人でも多視点になる

財務・現場・顧客・法務など複数の立場をAIに演じさせれば、会議の調整なしで多視点の洗い出しができる。

② 何度でも壁打ちできる

計画が変わるたび回せる

企画が固まる前の途中段階でも、気軽に何度でも実行できる。実施コストがほぼプロンプトを貼る手間だけ。

③ 言い出しにくい懸念も出る

対人の遠慮がない

対面だと角が立つ指摘も、AI相手だとフラットに出やすい。出てきた指摘をどう扱うかは人が判断する。

④ 視点の偏りを減らせる

立場を指定して洗い出す

担当者1人の視点だけでは気づきにくい観点を、あらかじめ指定した立場から強制的に出させられる。

プロンプトの基本的な組み立て方(役割設定・具体的な指示・出力形式の固定など)は、プロンプトのベストプラクティス|OpenAI / Anthropic / Google の公開ガイドから整理で整理しています。次の章のプロンプトも、この原則に沿って組み立てています。

04.実践プロンプト集|場面別にそのまま使える4パターン

ここからが本記事の中心です。プレモーテムをAIにやらせるための4つのプロンプトを、使う場面ごとに紹介します。いずれも【 】の中を自社の企画内容に置き換えて使う想定です。

新規企画・施策のプレモーテム

新しい企画や施策を立てた直後に使う、もっとも基本のプロンプトです。財務・現場・顧客・競合という4つの立場から、それぞれ懸念を挙げさせます。

あなたは複数の専門家からなる審査チームです。以下の企画について
「実行した結果、失敗に終わった」と仮定し、その視点から
原因を洗い出してください。

【企画の概要】
(目的・対象・実施時期・予算感をここに記載)

【手順】
1. 次の4つの立場から、それぞれ2〜3個ずつ失敗の原因を挙げる。
   - 予算・採算を見る財務の立場
   - 実際に運用する現場の立場
   - 対象となる顧客・ユーザーの立場
   - 競合・市場環境を見る立場
2. 各原因について「起きやすさ」「起きたときの影響度」を
   それぞれ3段階(高・中・低)で評価する。
3. 起きやすさ・影響度がともに「高」の原因を上位3つに絞り、
   理由を1〜2文で説明する。
4. 表形式で出力する(列: 立場 / 原因 / 起きやすさ / 影響度)。

推測や一般論ではなく、この企画固有の事情に基づいて
具体的に書いてください。

出力された表のうち、起きやすさ・影響度がともに「高」の項目を中心に、企画書に対策を書き足すか、計画そのものを見直すかを判断します。

マーケティング施策(広告・LP・キャンペーン)

広告出稿やランディングページ改修、キャンペーンなど、マーケティング施策向けに立場を差し替えたパターンです。景品表示法などのコンプライアンス観点を明示的に含めています。

あなたは複数の専門家からなる審査チームです。以下のマーケティング
施策について「実施した結果、成果が出ずに終わった」と仮定し、
その視点から原因を洗い出してください。

【施策の概要】
(施策の種類・目的・ターゲット・予算・実施期間をここに記載)

【手順】
1. 次の4つの立場から、それぞれ2〜3個ずつ失敗の原因を挙げる。
   - 予算対効果を見る立場
   - クリエイティブ・訴求内容を作る立場
   - ターゲットとなる顧客の立場
   - 景品表示法などの表現・法令順守を確認する立場
2. 各原因について「起きやすさ」「起きたときの影響度」を
   それぞれ3段階(高・中・低)で評価する。
3. 表現・法令順守の観点で懸念があれば、それだけは
   優先度に関わらず個別に指摘する。
4. 表形式で出力する(列: 立場 / 原因 / 起きやすさ / 影響度)。

表現・法令順守の観点で出た指摘は、AIの判断だけで採否を決めず、社内の確認フローに回します。AI活用は「品質管理あり」の運用が前提で、最終確認は人が行います。

AI導入・DXプロジェクトの実行判断

AI導入やDXプロジェクトを実行するかどうかの判断も、プレモーテムを当てはめやすい場面のひとつです。導入の効果測定・組織への浸透という、後から響いてくる観点を組み込んでいます。

あなたは複数の専門家からなる審査チームです。以下のAI導入プロジェクトに
ついて「導入した結果、定着せず失敗に終わった」と仮定し、その視点から
原因を洗い出してください。

【プロジェクトの概要】
(導入するAIの用途・対象部門・想定効果・導入時期をここに記載)

【手順】
1. 次の4つの立場から、それぞれ2〜3個ずつ失敗の原因を挙げる。
   - 効果測定・投資対効果を見る立場
   - 実際に日常業務でAIを使う現場の立場
   - 情報セキュリティ・権限管理を見る立場
   - 中長期の運用体制を見る立場
2. 各原因について「起きやすさ」「起きたときの影響度」を
   それぞれ3段階(高・中・低)で評価する。
3. 起きやすさ・影響度がともに「高」の原因を上位3つに絞り、
   導入前に確認すべきこととして言い換える。
4. 表形式で出力する(列: 立場 / 原因 / 起きやすさ / 影響度)。

導入後のKPI設計はAI導入のKPI設計|利用率だけで終わらせない効果測定と社内ルール、組織への浸透設計はAI研修・社内浸透設計|利用率を組織能力に変える進め方で別途整理しています。プレモーテムで洗い出した懸念を、導入後の指標に反映させたい場合はあわせてご覧ください。

洗い出したリスクに対策を立てさせる

懸念を出すだけで終わらせず、対策まで一気にAIに書かせるフォローアッププロンプトです。上記いずれかのプロンプトの出力に続けて投げます。

先ほど挙げた原因のうち、起きやすさ・影響度がともに「高」だった
項目について、それぞれ次を提案してください。

1. 実行前に打てる対策(1〜2個)
2. その原因が実際に起き始めていることを示す、早い段階の
   兆候(何を見ていれば気づけるか)
3. 兆候が出たときに、誰が・何を判断するか(撤退や計画変更の
   基準)

表形式で出力してください(列: 原因 / 対策 / 早期の兆候 / 判断基準)。

この表は、企画書の「リスクと対策」欄にそのまま転記できる形になります。早期の兆候と判断基準まで決めておくと、施策が走り出したあとに「様子見」のまま対応が遅れる事態を防ぎやすくなります。

05.AIにやらせるときの注意点|任せきりにしないための4つのコツ

AIを壁打ち相手にするプレモーテムには、いくつか気をつけたい点があります。

AIにプレモーテムをやらせるときのチェック
  • ✓ 出てきたリスクを『事実』として受け取らない。AIはもっともらしい理由を作るのが得意なだけで、実際に起きる保証はない。自社・自社商材固有の事情に照らして取捨選択する
  • ✓ 機密情報の扱いに注意する。具体的な数値・未公開の戦略・個人情報を入力する場合は、入力データが学習に使われない設定・契約のAI環境で行う
  • ✓ 一度の出力で終わらせず反証させる。『本当にそうか』『見落としはないか』と追加で問い直し、複数ラウンドで精度を上げる
  • ✓ 最終判断はチームに戻す。AIの出力は会議の叩き台として持ち込み、言い出しにくい懸念を安全に出す場を人間同士でも設ける
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発展的な選択肢
Claude CodeやCodexを使うなら、既製の「プレモーテムスキル」もある

毎回プロンプトを貼るのではなく、決まった型として繰り返し使いたい場合、Claude CodeやCodexのようなコーディングエージェントが使える環境であれば、プレモーテムを自動実行する「スキル」も選択肢になります。たとえばPre-Mortem-Skillは、Gary Klein氏の手法をもとに、計画を入力すると失敗を仮定して段階的に原因を掘り下げる、コミュニティ公開のスキルです。自社の業務に合わせてスキルを自作する方法は、Claude Code・Codexのスキルの作り方|SKILL.mdの書き方とSkill Creatorの使い方で整理しています。

06.よくある質問(FAQ)

プレモーテムとポストモーテム(振り返り)は何が違いますか?

実施するタイミングが逆です。プレモーテムは施策を実行する前に「失敗したと仮定して」原因を先回りで洗い出す手法で、狙いは未然の対策です。ポストモーテムは施策が終わったあとに実際の結果を振り返る手法で、狙いは次回への学びの蓄積です。どちらも多くの現場で使われている定番の型で、プレモーテムで洗い出した懸念点は、実行後にポストモーテムで答え合わせをすると、次のプレモーテムの精度も上がります。

プレモーテムをAIにやらせるとき、どのツールを使えばよいですか?

チャット形式でやり取りできるAI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)であれば、基本的にどれでも実行できます。本記事のプロンプトは特定のツールに依存しない汎用的な指示文なので、貼り付けて使えます。社内の機密情報を含む企画を扱う場合は、入力データが学習に使われない設定・契約になっている環境を選ぶ必要があります。

1人で施策を担当していても、プレモーテムは意味がありますか?

意味があります。プレモーテムは本来、複数人で集まって多様な視点から懸念を出し合う手法ですが、1人で担当している場合はAIに複数の立場(財務・現場・顧客など)を演じさせることで代用できます。人を集める調整コストがかからないため、むしろ1人担当の施策のほうがAIとの相性は良いともいえます。

AIに出させたリスクを反映したのに、実際に失敗した場合はどうすればよいですか?

プレモーテムは失敗をゼロにする保証ではなく、事前に洗い出せる範囲の懸念を減らす手法だと捉えます。実行後は、想定していなかった原因が何だったかを振り返り(ポストモーテム)、次回のプレモーテムのプロンプトに「過去に見落とした観点」として加えていくと、洗い出しの精度が回を追うごとに上がります。

どのくらいの規模の施策から、プレモーテムをやるべきですか?

予算や後戻りのコストが大きい施策ほど効果が出やすいですが、AIを使う場合はプロンプトを貼るだけなので、実施コストはほぼゼロです。小さな施策でも、企画を書き終えた直後に一度回してみて、出てきた懸念が軽微であれば読み流す、重ければ計画を見直す、という運用で十分です。規模で線引きするより、まず習慣にすることをおすすめします。

07.まとめ:小さく壁打ちし、判断は人が引き取る

プレモーテムは、企画や施策を実行する前に「失敗したと仮定した場合の原因」を先回りで洗い出す手法です。AI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)を壁打ち相手にすれば、人を集める負荷なく、複数の立場から、何度でも実行できます。新規企画・マーケティング施策・AI導入判断のいずれでも、立場を指定して洗い出させ、出てきたリスクに対策と早期の兆候まで書かせる、という流れは共通です。

AIの出力を鵜呑みにせず、自社固有の事情で取捨選択し、最終判断をチームに持ち帰るところまでを含めて、プレモーテムという手法になります。プレモーテムに限らず、外注していた定型業務そのものをAIで効率化したいという相談も少なくありません。

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澤田 翔太(Shota Sawada)
この記事を書いた人

澤田 翔太

株式会社クリプタル 代表取締役

1988年生まれ、慶應義塾大学卒。創業メンバーとして関わった株式会社セールスサポートを株式会社ネオマーケティング(東証STD 4196)に売却。株式会社クリプタルでも複数の事業立ち上げと売却を経験し、2022年9月には婚活・恋愛メディア「シッテク」「婚活会議」を株式会社ベビーカレンダー(東証GRT 7363)へ売却。現在はAI業務支援事業、TANTOU事業、グロースハック支援事業、メディア事業、SEOコンサルティング事業を手がける。